「鈴」と日本らしさ

伝承・伝統・文化

「鈴」はキーホルダーやスマホにつけたり、女性が和服を着る際に簪(かんざし)につけたりするなど、身近なものです。

かんざし

「鈴」の起源には諸説あるものの、縄文時代には土鈴(どれい)という土製の鈴が存在しており、古墳時代には金属製の鈴が作られるようになっています。古事記にも記述があるとても歴史が古いものです。

土鈴

神道の神楽舞においては、巫女さんが神楽鈴と呼ばれる鈴のかたまりのようなものを手にもって振ります(果実の鈴なりの語源)。この「鈴」を鳴らして舞を踊ることによって、周辺の邪気を祓い清めて結界を張り、神と一体となって神の声を聞くのです。

神楽鈴


また、多くの神社には賽銭箱の上に大きな「鈴」があり、私たちは賽銭を投げた後、「鈴」を鳴らして手をあわせる習慣を、知らず知らずのうちに身につけています。
参拝の際に「鈴」を鳴らすのは、神道の作法のひとつで参拝したときに自分たちがきたことを神さまにお知らせする役割があります。

神楽舞に用いられ、神社にも備え付けられるようになった「鈴」は、お守りや印籠や矢立などを紐で帯から吊るし持ち歩くときの「根付」にも使用されるようになります。
「鈴」の清らかで高い音には、神さまの御霊を呼び寄せる力があり、「鈴」を持ち歩くことによって、邪気を飛ばす魔除けや厄除けとなり、神さまのご加護を受けられると考えられています。
それが冒頭に述べた現在のキーホルダーやスマホに「鈴」をつけることにつながっているのです。

このように神道の作法といった仰々しいものだけではなく、身近なお守りなどとして「鈴」を用いることに先人たちの知恵がみえます。そんなところも日本らしさの一つであることと、神さまとの交信道具としての位置付けが「鈴」にあることを、改めて心に留めておきたいと思います。
そして鈴以外にも、私たちの身近には機能も用途も姿を変えてしまったものの、その心延こころばえを引き継いで重要な意味を内包しているものがあるのではないと思いました。