私たち志氣友学舎は政治イデオロギーでいうと「保守」の立場です。
それでは「保守」とは何?右翼とどう違うの?反グローバリズムは保守なの?
そういった疑問が出てくる方もおられると思います。
そこで、「政治イデオロギー」とは何か?その中で「保守」とは何か?について考えてみました。
政治イデオロギーを学ぶ意義は2つあるとされています。
ひとつは「権力がない立場の人が政治権力に操作されないようにするため」
もう一つは「日常生活を営むうえで、好むと好まざるにかかわらず、直接的、間接的に政治
との関わりやその影響を否応なしに受けるから」です。
「街の評論家」「床屋談義」「ワイドショー論評」など、政治現象についての論評はすこし知識があればできることですが、その場しのぎの説明や理解で本質的な部分を考えないことになるのではないか?という危惧もあります。
イデオロギーという用語は、フランス革命期に啓蒙主義者のA・D・トラシが公表した造語で、
「思想の科学」、つまり思想学(論)(idea‐ology)という意味が込められていました。
生物学、動物学などと同様、既成科学と同じ地位にまで高められ、様々な考え・思考・志向を測る客観的基準となると宣言していたのです。
しかしそうはならず、それぞれのイデオロギーの正統性を理論づけるために政治利用されるようになっていきました。
そうなってしまったのは、イデオロギーについて各自が同意する定義があいまいで、中立的、客観的な基準にならなかったことによります。
政治的イデオロギーをどんなものか規定する上で基準とされているのが左翼と右翼という用語です。これは、フランス革命の政治原理に賛成か反対かに由来しています。
左翼(left)は「自由、平等、進歩といった原理を重んじるイデオロギー」
右翼(right)は「権威、秩序、身分、地位、義務のような原理・原則を重んじるイデオロギー」
です。
この基準で各イデオロギーを規定すると一般的には図のようなモデルになるとされています。

しかしながら、イデオロギーはもっと複雑になっていきます。
19世紀初期までに登場した主要な政治イデオロギーである
・自由主義(資本主義の政治的イデオロギー)
・保守主義(伝統的な社会秩序を防衛、維持する努力する立場)
・社会主義(資本主義社会を不正な社会と糾弾する立場)
これらはその後、共産主義、ファシズム、グローバリズムの先駆けである帝国主義、途上国で帝国主義に対抗した宗教原理主義、エコロジー主義、などに派生していき、世界へと広がり意味も変化して分岐していきます。
また、イデオロギーは純粋な形にとどまらず、他のイデオロギーと混ざりあっていきます。
例えば、自由主義的保守主義、社会主義的フェミニズム、保守主義的ナショナリズムなどがそれにあたり、相反する矛盾した諸要素から成立しています。
そのため、イデオロギーで考えるのは古い、イデオロギーの時代は終わったといった声が上がった時期がありました。
一方、政治学的観点では、左翼と右翼を、政治的な切り口と経済的な切り口の二つで考えるようになっていきました。
①政治的左翼
「人間の進歩を信じる」「政治的な機関が個人、社会をより善いものにする」「変化と革新に肯定的」「市民的、道徳的自由や政治問題において平等、主権が人民にあると主張」「伝統・宗教・因習より理性・科学・合理性の優位とする」という特徴があります。
②政治的右翼
「人間の性格が新しい価値観によって改善されることには懐疑的」「社会的、政治的、道徳的な秩序を重んじる」「社会・経済の不平等がある程度存在することを認める」「民族主義的な考え方を認める」「非合理的ところがあっても信念と感情、伝統的家族・道徳観を重んじる」という特徴があります。
③経済的左翼
「統制・計画経済に好意的である」「産業労働者、土地を持たない農民などの利益や、いわゆる弱者を擁護する」「社会的に不利益な人々に財政的に援助する」「市場メカニズムに国家の管理・介入を認める」という特徴があります。
④経済的右翼
「自由・市場経済を肯定する」「経済分野での選択の自由を擁護する」「国家介入は最小限にすべきだとする」「国家の社会保障制度による救済よりも自己救済や個人による自己保障を選択する」という特徴があります。
ざっくり解釈してしまうと
①と③の結合(政治的左翼と経済的左翼)は社会主義・共産主義
①と④の結合(政治的左翼と経済的右翼)は集団アナーキズム
②と④の結合(政治的右翼と経済的右翼)はリバタリアニズムや個人アナーキズム
②と③の結合(政治的右翼と経済的左翼)は改革主義的な軍事体制を主張するナチズム、ファシズム
ということになります。
解釈の一例を図にしてみました。(いろいろな方が似たような図を作っていますが、それぞれ解釈が異なる部分はあります。)

イデオロギーには二つの側面があり、それぞれ二つの役割があります。
ひとつは、政府(指導者側、支配者側)にとっての役割です。
①現在の状況説明や未来像の根拠を示すこと。(分析的な使用)
②どうやって現状を維持するのか、あるいは変革するのかを説明する。(行動様式説明での使用)
現在の日本政府はできていないと思いますが…。
もう一つは政府以外の人たちにとっての役割です。
①現実世界を理解する道具としての役割
②自分の思考を整えた形で外界に主張する道具としての役割
使いこなせている人はあまりいないかもしれません。
政治的イデオロギー的視点で考えてみると、私たち保守の立場はほぼ中道の少し右寄りといったところであり、いわゆる右翼ではないということになります。その自覚をもってこれからの活動をしていきたいと思います。