有事における離島避難の態勢について

安全保障

国民保護の体制強化

政府は、2022年に策定した国家安全保障戦略において「国民保護のための体制強化」を盛り込み、南西地域を含む住民の避難計画を速やかに策定するとしました。
武力攻撃事態等から国民の生命、身体及び財産を保護することを目的とした国民保護法の成立から20年になりますが、近年の台湾有事への懸念の高まりから、ようやく国民保護に関する具体的な検討がなされ始めました。
沖縄県・先島諸島の住民を県外避難させる計画は、2024年度中にも策定される方針です。
本年度内には、先島諸島の多良間村から熊本県八代市へ住民を避難させる計画を先行的に取りまとめ、他自治体の避難計画のモデルケースとする予定です。

沖縄県の国民保護訓練

2023年3月、沖縄県は武力攻撃予測事態を想定した図上訓練を初めて実施し、先島諸島から県外に避難する要領等について検討・認識共有を行いました。
初の図上訓練の結果、課題として
・先島諸島市町村における要配慮者を含めた輸送力の確保
・避難要領の具体化の追求
・県内の応援体制、避難者受入自治体との連携要領の確立
・県全域の県外避難要領等、県全域の避難のあり方に関する検討
が挙げられました。

本年1月には、2回目となる図上訓練が国、沖縄県、先島5市町村の共催で実施され、内閣官房、消防、警察、自衛隊等が参加しました。
2回目の図上訓練では、事態認定前の住民避難の検討に重点を置いた関係機関等連絡調整会議運営訓練の実施が主眼に置かれました。 
訓練は、沖縄県全域を要避難地域とし、特に先島諸島の住民等約12万人を九州各県及び山口県で受け入れることを基本として、避難経路や輸送手段等を検討しました(沖縄本島等他の市町村は屋内避難)。

訓練で示された避難経路と輸送手段

訓練で示された先島諸島住民の避難経路は次のとおりです。

避難経路確保可能な輸送力
八重山地域
(石垣市・竹富町・与那国町)
与那国空港福岡空港10,485人/日
新石垣空港1,727人/日
石垣港鹿児島港420人/日
宮古地域
(宮古島市・多良間村)
宮古空港鹿児島空港6,645人/日
下地島空港2,832人/日
平良港鹿児島港420人/日
石垣港からの避難住民含む
訓練資料をもとに簡略化して表示。島内避難経路は各自治体の避難実施要領による

航空機・船舶による域外輸送力は、平時の2倍を超える1日約2万人を確保できることが見込まれ、単純計算で6日程度で約12万人の住民等を九州へ避難させることが示されました。
航空機による避難を基本としつつ、航空機で避難できない要配慮者及びペット同伴者等のための補充的な輸送力として、近海区域である沖宮海峡を航行可能な船舶の確保が必要になります。
近海区域を航行可能な候補船舶として、民間チャーター船、NPO法人保有船、県実習船、自衛隊民間資金活用船、海上保安庁巡視船の計9隻が挙がりました。

離島避難の課題

さらなる避難計画の具体化が進んだ2回目の国民保護訓練ですが、細部にわたり課題は残っています。
・近海区域を航行可能な船舶の確保
・事態認定下における空港の保安検査要員の確保
・空港の運用時間・条件を考慮したスポット運用案の実行性向上
・専門的な知見に基づく要配慮者の輸送アセットの検討
・避難先における生活の安定確保
など、県は引き続き関係機関と連携しながら検討会を重ねる方針です。