食料安全保障について私たちができること

安全保障

我が国における食料安全保障の現状

もしも戦争や緊急事態が起こったとき、国民生活を持続的に機能させていくためには食料の安定供給を確保しなければなりません。しかし、日本は食料の多くを海外に依存しているため、戦争や緊急事態の影響で輸入が滞れば深刻な影響を受けることになってしまいます。

また、輸入が滞ることで影響を受けるのは「食料」そのものだけではありません。
それは農業生産を継続するためには石油、肥料、鉄鉱石などの資源が不可欠だからです。トラクターや収穫機などの農業機械は石油で動き、化学肥料の原料もほぼ輸入に頼っています。鉄鉱石は農機具や温室の骨組みなど、農業インフラに欠かせません。
食料以外の資源を運ぶシーレーン(海上輸送路)を確保することも、日本の食料生産を支えるうえで非常に重要になります。

シーレーンを守る役割を担っているのは海上自衛隊です。安全な航路を維持し、資源を安定的に確保できるようにすることが、結果として日本の食料安全保障にもつながっているのです。

食料自給率と食料自給力

日本の食料自給率は、カロリーベースで38%、生産額ベースで64%となっています。この2つの指標は、食料の自給状況を異なる角度から示すものです。

カロリーベース自給率は、国民が1日に摂取するカロリーのうち、どれだけを国内生産で賄えているかを示します。穀物などカロリーが高い食品の割合が大きく影響します。

生産額ベース自給率は、国内で消費される食料の金額ベースでの自給率です。価格の高い畜産物や野菜の生産が多い国では高くなります。

日本はカロリーベースの自給率が低い一方で、生産額ベースでは比較的高い値を維持しています。これは、国内で主に生産されるものが野菜や果物、畜産物などの付加価値の高い食品であり、穀物や飼料の多くを海外に依存しているためです。

カロリーベースの食料自給率を上げることは、生産額ベースの食料自給率を高くしている畜産を減らし、輸入飼料の消費を抑えることで比較的容易に実現できます。
少なくとも畜産用の飼料を国内生産の穀物に切り替えることで、畜産業が輸入に頼る割合を減らし、カロリーベースの自給率を上げることが可能です。

ロシアの家庭菜園が支えた食料供給

ロシアは、旧ソ連のペレストロイカ後の経済混乱で食料供給が不安定になりました。そこでロシア国民は「ダーチャ」と呼ばれる家庭菜園を活用し、食料自給を進めました。現在も多くの国民が自宅や郊外の畑で野菜や果物を育て、ジャガイモやトマト、鶏や豚などを飼育しています。ロシアの家庭菜園では、食料の約50%を自給できる地域もあるほどです。

このように、ロシアの例を見ると家庭菜園の力は想像以上に大きな影響を持っていることがわかります。日本でも農業従事者が減少している一方で、家庭菜園や地域農業の可能性は十分に残されています。都市部でもベランダ菜園やシェア畑の活用が広がっており、小規模ながらも食料供給を支える手段となるでしょう。

私たちがすぐにできること

日本にはまだ多くの農地があり、さらに使われていない耕作放棄地も多く存在します。こうした農地を活用することができれば、食料自給率を高め、持続可能な食料供給体制(食料自給力)を整えることができます。
そのために私たちができることは、まず地元産の野菜や米を積極的に購入することです。それが国内の農業を支えることにつながります。

また、家庭菜園は手軽に始められる方法の一つです。例えば、ベランダや庭の一角を活用してトマトやハーブを育てるだけでも、食料の一部を自給できるようになります。

一人ひとりが具体的な行動を起こしてみませんか。
・家庭菜園を始める
・地元産の食材を積極的に選ぶ
・米や大豆など国内で生産されている食品を意識して食べる

こうした小さな積み重ねが、食料安全保障を支え、日本の未来を守ることにつながっていきます。