カルト化した政党の危険性

学術

昨今、カルト化した政党の台頭が目立つようになっています。これは既存政党があまりに不甲斐ないことで起こったことですが、カルト化した政党が社会をよくすることはあり得ません。社会にとって危険な兆候とも言えます。
今回はカルト化した政党が何をもたらすのか考えてみたいと思います。

まず、政党、カルトについて再度確認してみましょう。

政党とは
「共通の政治的主義・主張を持つ者によって組織され、一定の政治的利益や政策の実現のために活動し、政権獲得を目指す集団。」
社会で人々を党員として組織する一方、国家機構である政府や議会にポストを得て、両者を結び付けるのが特徴です。

カルトとは
カルト(英: cult)は、ラテン語のcolo(動詞:耕す)から派生した cultus (名詞:耕作、世話、崇拝など)を語源とする言葉
学術用語としては「カリスマ的指導者を中心とする小規模で熱狂的な会員の集団」

どちらもある目標を持つ集団なので一定の親和性があります。それらが組み合わさりカルト化した政党となると
「カリスマ的指導者が打ち出す政治的主義・主張を熱狂的に支持する者によって組織され、カリスマ的指導者の政治的利益や政策の実現のために活動し、政権獲得を目指す集団。」
ということになります。
これだけならあまり問題なさそうですが、「カルト」には様々な問題点があります。

カルトの問題点

・対象者をマインドコントロールや洗脳…要するに、行動や思想、考えることを停止させ、操り人形化する
・知らないうちにその対象者が加害者側に回り、自分と同じ被害者を増やす
・人格から考え方から全て変容させてしまう
・自分が被害に遭っていることに気付かない、「何かがおかしい」と考えることすらできないほど思考を停止させる
・自由に行動したり物事を考えたりできなくなる
・経済的搾取を受けたり、加害者側にも回り経済被害を再生産する
・結婚や恋愛、性的自己決定権、家族関係などに不当に介入される
・指導者らによる暴力、虐待、体罰、ハラスメントなどを受け、逃げられない状況にさせらされる
・反社会的な活動に向かってしまう
・1人取り込むことができれば、そこからまた何人かに入り込めるはずというねずみ講やマルチ商法と同じ発想

ざっくりまとめると
「カリスマ的指導者が党員をマインドコントロールし、思考停止させ、人格を変え、二次被害を生む加害者にさせ、結婚や家庭関係にも不当介入し、ハラスメントによって逃げられない状況に追い込み、反社会的行動に向かわせる政党」
ということになります。

こう考えるとカルト化した政党というのはかなり危険な組織・集団という感じがしてきます。

カルト化した政党の深刻な問題点

ここで、カルト化した政党が個人・集団・社会にもたらすことを考えてみましょう。

  1. 批判や異論の排除
    カルト化した政党では、指導者や教義に対する批判や異論が許されなくなり、内部での自由な討論ができなくなります。党内の意見が統一され、独裁的な体制が確立されると、政策の柔軟性が失われ、国民の多様な意見を反映できなくなります
  2. 指導者への盲目的な服従
    カルト集団では指導者への絶対的な服従が求められることが多く、政党がカルト化すると党員や支持者がリーダーの命令に従うことが最優先になります。これにより、指導者の権力が肥大化し、民主的なプロセスが損なわれます。また、リーダーの失策や不正行為が見過ごされやすくなり、国家運営にも悪影響が及びます。
  3. 情報の操作とプロパガンダの強化
    カルト化した政党では、情報が厳しく管理され、指導者や教義に都合の良い情報だけが流されます。党内外に対するプロパガンダが強化され、国民や党員が誤った情報を信じ込む状況が作り出されます。これにより、透明性のある政策決定が不可能となり、誤った方向に国家が導かれるリスクが高まります。
  4. 民主的制度の形骸化
    カルト化した政党は、民主主義の基本的な原則である意見の多様性や選挙の自由、公正な議論を軽視する傾向があります。結果として、政党内の意思決定が一部の支配層によって行われ、一般党員や国民の意見が反映されなくなります。これにより、民主主義的制度そのものが形骸化します。
  5. 外部との対立や孤立化
    カルトは外部の批判や干渉を「敵」とみなす傾向が強く、カルト化した政党も同様に外部の政治勢力や国際社会との対立を深める可能性があります。他の政党や国際的な機関と協力することを拒否し、孤立化することで、国際的な信用を失い、外交や経済に悪影響が生じます。
  6. 内部分裂と粛清
    カルト的な指導体制では、リーダーに忠誠を誓わない党員が粛清されることがあり、政党内部での内部分裂や対立が激化する可能性があります。特に指導者への忠誠心が最重要視されるため、内部監視や密告が横行し、党員の間に不信感が生まれます。これにより、党の健全な機能が失われ、外部からの批判に対処できなくなる可能性があります。
  7. 政策の非合理化・教義化
    カルト化した政党では、政策が合理的な議論や事実に基づくものではなく、指導者や教義に従ったものになります。これは、経済政策や社会政策において実現不可能な目標が設定されたり、現実的な問題解決から遠ざかる結果を招きます。科学的知識や専門家の意見が無視され国の運営が非合理的な方向に進むリスクが高まります。
  8. 国民の自由と権利の制限
    カルト化した政党が政権を握った場合、国民の自由や基本的な権利が制限される可能性があります。特に言論の自由や集会の自由が抑圧され、反対意見が公に表明できない社会が形成されます。さらに、国民が政府の方針に従うことが強制され、異なる意見やライフスタイルが排除されることにもつながります。
  9. 汚職や不正の蔓延
    カルト化した政党では、指導者やその取り巻きが権力を独占するため、党内での汚職や不正が横行しやすくなります。リーダーの権力を守るために、司法機関や監査機関が操作され、公正な取り締まりが行われなくなる可能性が高まります。この結果、国家運営の信頼性が低下し、国民の不満が高まります。
  10. 暴力や脅迫の利用
    カルト的な政党は、暴力や脅迫を利用して反対勢力や内部の異論者を抑え込むことが多いです。これにより、政党内外での緊張が高まり、社会不安が広がります。また、暴力的な手段が正当化されることによって、法の支配や秩序が崩壊し、国家の安全保障に脅威が及ぶ可能性があります。

政党がカルト集団に変質すると、これらの問題が重なり合うことで政治的・社会的な機能が崩壊し、民主主義や市民社会が深刻に損なわれます。そのため、政党がカルト化しないよう、透明性や責任感、民主的な手続きを維持することが非常に重要です。